傷寒論14条(桂枝加葛根湯)

人通りの少ない難波駅

こちらは専門的な内容の記事です。

「衆方の祖」と言われる桂枝湯ですが、
桂枝湯にはさまざまな加減法が存在する。
加減法とは桂枝湯をベースに調整したお薬達のこと
いわゆる「匙加減」というやつである。

湯液(漢方)は鍼灸と違う治療法だが
加減している生薬と症状から身体にどのような変化が
起こっているのか推察できる
推察できれば、応用もまた然りというわけだ。

今回の桂枝加葛根湯は、寝違え頚椎症頚肩腕症候群
首周りの過緊張で起こる耳鳴りめまい頭痛など
鍼灸院でも馴染みの深い症状に応用されている。


目次

桂枝加葛根湯

太陽病、項背強几几、反汗出悪風者、桂枝加葛根湯主之。

『傷寒論』十四条

太陽病の症状に、
①背中の強張り(項背強几几
②発汗と悪風(反汗出悪風
が合わさった状態である。
「反」という字があるのは
背中が強張ると汗腺も閉じてきて無汗となることが多いが
今なぜか汗が出てしまっていることを述べようとしている。

解釈

桂枝加葛根湯の病態については
二人の有名な臨床家から引用してみよう

邪が人にあたるとき、初めは皮膚、次に肌絡、次に経輸へと進む。邪が経輸にあるとき、経輸は(邪がいるために)実となり皮毛は虚す。ゆえに汗が出て悪風する。桂枝湯の解肌に葛根を加えて経絡の気を通す。

夫邪之中人始于皮膚、次及于肌絡、次及于経輸、邪在于経輸、則経輸実而皮毛虚、故反汗出而悪風也。宜桂枝湯以解肌,加葛根以宣経絡之气。

張錫駒著『傷寒論直解』より抜粋

太陽経は背中を巡っており、今風邪がその隙間に入ると、経絡の気がスムーズに運行せず、項や背中が強張る。さらに邪が入ると、無汗となるところが発汗する。これは邪が隙間に止まることで腠理が密にならないためである。肌腠が虚すと自ずと悪風が起こる。桂枝等によって太陽の邪を除き、葛根を加えて経気を通すのである。

太阳経脉循行于脊背之間,今風邪涉于分部,而経气不舒,故項背强而然也。循経下人,是当无汗,反汗出者,発部受邪而肌腠不密也。肌睽虚,故悪風,用桂枝湯以解太阳肌中之邪,加葛根宣通経脉之气,而治太阳経脉之邪。


張志聰
傷寒論集注』より抜粋

二人の論旨に差はあれど、太陽経の経気がスムーズに流れないという点で一致しており、これに葛根を加えることで症状の改善がはかれると考えている。

鍼灸における応用

太陽の経気を疏通させるような経穴はたくさんある。
頚椎症頚肩腕症候群などの場合は解剖学的に局所取穴をすることも非常に有効だが、遠隔から取穴も取り入れることでより広い範囲で効果を期待できる。

代表的な遠隔からの経穴は
飛陽跗陽申脈、などの足首周辺の経穴
手では後渓などが考えられる。

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