陰陵泉ってどんなツボ!?【経絡経穴ジャーナル】

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陰陵泉の由来

陰陵泉
陰陵泉

ツボは過去から現在までその数が増減していますが
陰陵泉は今から2000年ほど前の医学書である
『霊枢』九鍼十二原篇に「陰之陵泉」という名前で
登場する由緒正しいツボです。

疾高而内者.取之陰之陵泉.疾高而外者.取之陽之陵泉也.

病が上方にあって、かつ内側にあるものは、これを陰陵泉に取る。
病が上方にあって、かつ外側にあるものは、これを陽陵泉に取る。

『霊枢』九鍼十二原篇

また『霊枢』の本輸篇には以下のような記述があり、
膝周囲経穴であることが分かります。

入于陰之陵泉.陰之陵泉.輔骨之下.陷者之中也.伸而得之.爲合.足太陰也.・・・入于陽之陵泉.陽之陵泉.在膝外.陷者中也.爲合.伸而得之.足少陽也.

〔脾経の気は〕陰陵泉に入る。陰陵泉は、輔骨の下、陥凹しているところの中にある。〔膝を〕伸ばすとこれを得る。合穴であり、足太陰脾経に属する。・・・〔胆経の気は〕陽陵泉に入る。陽陵泉は、膝の外側、陥凹しているところの中にある。合穴であり、〔膝を〕伸ばすとこれを得る。足少陽胆経に属する。

『霊枢』本輸篇編より抜粋

陰陵泉の特徴

解剖生理学からみた陰陵泉

陰陵泉の表面には伏在神経の枝が通っている。
直下には脛骨神経支配の腓腹筋や半腱様筋があり、
深い部分ではヒラメ筋・周辺には縫工筋がある。
血管は内側下膝動静脈や伏在静脈が通る。

解剖学的には鵞足周辺や下肢のポンプに関わる筋肉を直接刺激できる場所にあり、周辺の筋緊張緩和だけでなく下腿後面深層の水分代謝・筋ポンプ機能を促進できると考えられる。

エビデンスから見た陰陵泉

陰陵泉単体での研究は見つかりませんでしたが、他の経穴と組み合わせることでさまざまな症状に応用されています。

泌尿器科領域

  • 前立腺肥大症(BPH): 2025年のシステマティックレビューでは、85件の臨床研究を分析し、陰陵泉(SP9)が高頻度で使用される経穴の1つであることが示されました。関元、中極、三陰交などと組み合わせて使用されています。
  • 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS): 週3回、4週間の鍼治療(関元、中極、足三里、三陰交、陰陵泉を含む)により、NIH-CPSI症状スコアが改善し、脳構造の変化が観察されました。メタアナリシスでも複数の研究で陰陵泉が使用されています。

消化器系領域

  •  胃不全麻痺: Cochraneシステマティックレビューに含まれる複数のランダム化比較試験で、陰陵泉が使用されています。Yuan 2004の研究では、CV13、CV12、BL20、ST36、SP6、SP9などを用いた鍼治療が実施されました。Zhang 2007の研究では、25の経穴の1つとして陰陵泉が含まれています。

婦人科領域

  •  月経困難症: Cochraneレビューに含まれる研究では、中医学的な分類の「湿熱の蓄積」パターンの治療として、陰陵泉(SP9)が使用されています。

古典から見た陰陵泉

陰陵泉の適応症を古典から拾うと、このような症状によく使われてきたのがわかります。

古典に多い主治現代的にいうと中医学的な見方
腹脹・腹中脹お腹の張り、ガス感水湿や気が中焦に停滞している
不嗜食・飲食不消食欲不振、消化不良脾胃の運化が落ちている
飧泄・溏泄軟便、下痢水分が便に流れ、消化が不十分
小便不利・癃尿が出にくい水道の通りが悪い
水腫むくみ余分な水分が皮下や下肢に停滞
遺尿・失禁尿が漏れる、尿を保てない水道の開閉が乱れている
足痺痛・脚気足の重だるさ、しびれ感湿が下肢に停滞している

陰陵泉の主治に多い症状には、共通点があります。それは中医学的に「水湿」と呼ばれるものです。
水湿とは、体の中の水分や湿気がうまく巡らず、停滞した状態を指します。現代医学の「水分代謝」と完全に同じ意味ではありませんが、イメージとしては「体の水はけが悪い状態」とイメージしてもらえると近いかもしれません。

陰陵泉はこの水湿が停滞した状態(湿邪・湿阻)を尿を通じて改善するのを得意としています。

参考文献

参考文献・資料

  • 『中国鍼灸穴位通鑑』青島出版
  • 『新版 経絡経穴概論』医道の日本社
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