東洋医学で独特の脈診。なぜそんな手首から体調が分かるのかと疑問が湧きます。今から2000年ほど前の時代、『素問』という書物の中では三分九候という脈診が主流でした。
今よりたくさんの場所を脈診していたのがわかります。これだけ触れば何か異常がわかりそうなものです。
ではなぜ、今は手首だけで体調を知るなんてことができるのでしょうか?そのきっかけは同じ『素問』という本にヒントがあります。この本の中の経脈別論篇という部分で、「五味(食事)は口から胃に入り、五臓の気を養う。・・五臓六腑の気味(全身の状態)は胃から起こり、その変化は気口(手首の動脈)に出る。」とあります。つまり、人の健康状態は胃に依っている部分がとても大きいので、その様子が手首の動脈に現れるのだ、と言いたいわけです。ここでいう胃は、東洋医学的な胃であり、現代でいうstomachとは見ているものが違うということには注意が必要です。
まとめると、この理論をもとに
「手首でも診察できるのでは!?」
という突拍子もない発想が、技術として磨かれ現代まで技として残ってきた経緯があるのです。これによってより簡便に全身の不定愁訴を取り扱うことができるようになり、さらに技術が発展しました。
この脈診のコペルニクス的転換が生まれたのが『難経ナンギョウ』という本であり、現代でも鍼灸師によって重宝されています。今回はそんな『難経』の一難の内容をご紹介しました。
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