鍼は何本刺せばいいのですか?

鍼と鍼皿

ときおり患者さんから「針って何本くらい刺すものなのですか」と聞かれることがある。当院のQ&Aには5〜10本と書いているのだが、もちろんそれよりも多いこともあれば少ないこともある。概ねそれくらいでしょうというわけだ。何本が適切かという問いは意外に難しい。古典を見ると、「首が痛くて上を向けない者には、足太陽経を取れ、振り向けない者には手太陽経をとれ1」といった具合に刺す範囲(経絡)を指定してくれているものの、具体的な指示はない。またあったとしても「下痢には三陰交を取れ2」といった一穴のみから十一穴3を使用するに至るまでさまざまである。傾向としては古い文献ほど使う経穴は少なく、時代が下るほど使う経穴は多くなる。では現代ではどうなのかと聞かれれば、現代は針の数に関してかなり乱立しているという印象が強い。トリガーポイント療法のような筋肉の硬結をしっかり狙うような施術は数本だけというわけにはいかないし、美容鍼では100本使うこともあろう。かたや一本で施術することにこだわりのある会派もある。ではどれかが正しくどれかは間違っているのだろうか?それぞれの治療が一定の市民権を持っているという意味で、どれかが無用の長物というわけではないのだろう。結論から言えばどれだけ刺すかというのは結果でしかない。当院のような整形外科的な痛み以外の疾患も含めて全体としての身体を診ようと丁寧に経穴を触っていくとせいぜい治療に使えそうなのは10穴以内くらいに絞れることが多い。治療に使えそうというと恐ろしく主観的なのであるが、明らかに軟弱な場所や熱感のあるもの、局所的な硬結の見られるものなどをとりあえずピックアップしていき、他の所見(舌診や脈診etc)と合わせていくとだいたい10穴くらいになるというわけだ。あとは効果の似た経穴はどちらを使うか・局所的に取るのか全身性でとるのかなどを選びつつ、徐々に使うツボを減らしていく。大切なことは少ないツボを使うから身体に優しい良いということではなく、たくさん打つ方がお得感があるみたいな話でもない。適切な量の針数を適切な分だけ患者さんへ施すことであり、そのために何を取捨選択するべきか。その結果が針を刺す数という具体的な数字として現れるのである。

  1. 「項痛不可以俯仰,取足太陽;不可以顧,刺手太陽也(霊枢・雑病)」 ↩︎
  2. 「飧泄取三陰(霊枢・九鍼十二原)」 ↩︎
  3. 「瀉痢、氣虛兼寒熱、食積、鷲邪、風邪、驚濕、陽氣下陷、痰積,當分治。瀉輕痢重。
    陷下則灸之脾俞、關元、腎俞、復溜、腹哀、長強、太谿、大腸俞、三里、氣舍、中脘。
    白痢大腸俞,赤小腸俞。(鍼灸聚英・治例)」
    ↩︎
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