針と一口にいっても実はさまざまな種類があります。そもそも針には2000年ほどの歴史があるのですが、当初は外科医が使うメス的なものも針と言われていました。要は刺したり切ったりできるような、尖っている医療器具に対して使われていたですね。現在知られているもので大きく九種類の針があり、九鍼と呼ばれています。現代の法律では鍼灸師の範疇を超える道具もありますが、歴史的な価値も含めて非常に興味深いものが多いです。今日はその中から3つご紹介します。
鑱鍼(ざんしん)
1つ目は鑱鍼(ざんしん)です。針っぽくない針です。「鑱」というのは鋭いという意味で、鍼の中で最も原始的な形をした針です。長さは当時の尺度で一寸六分とあるので、今で言えば3.7cmくらいでしょうか。一円玉の直径が2cmなので、一円玉を二枚並べたくらいの長さですね。意外に小さいです。
古典では「深く入れずに、陽気を出す」とあるので、皮膚病などに使われていたようです。昔は丸くなったところが鋭く切れる仕様になっていたようで、外科のメス的な使い方をされていた側面もあったようですが、今は切れないようになっており、皮膚にあてて使う鍼として普及しています。大人にも使えますが小児鍼で見た人が多いかもしれません。
員鍼(えんしん)
2つ目は員鍼(えんしん)です。長さは1寸6分ですので、鑱鍼とおなじく3.7cmほどでしょう。持ち手がある分こちらの方が小さな針といえるかもしれません。針とは言いますが、こちらは図の通り先端が丸くなっていて刺さずに擦るようにして使います。古典では「先端が卵の形のようだ」と書かれています。図からは卵感を感じれないので実際はもう少しまるみのある先端なのかもしれません。
使い方としては「病が分間にあれば、こすって員鍼を使う」「肌肉を傷つけず瀉す」とあるように、擦って使います。刺さずに使う針のため体力を奪わない針なのが特徴です。当院でもたまに使用します。
鍉鍼(ていしん)
3つ目は鍉鍼(ていしん)です。長さは三寸半とありますので8cm程度です。上の2つに比べると最も大きい針です。とは言ってもこちらも刺す針ではありません。古典では「まるくして先端がやや尖っている」とあり、優しく皮膚に当てるようにして使う針です。
当てるだけ効果があるのか?という疑問がでそうなものです。鍉鍼は脈(経脈)が弱ったときに使う針であるため、筋肉など組織への刺激はむしろ最小限になるような使い方になっています。おそらく刺入しないタイプで現在もっとも使われている鍼の一つです。
つづく
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