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毫鍼(ごうしん)
6つ目は毫鍼(ごうしん)です。先端は蚊のクチバシのようだと古典では例えられています。顕微鏡のない当時は人の視力で蚊の口が見えるわけもないので、痛み少なく使用できることを言いたかったのかと思われます。現代で鍼灸師が使う一般的な針はこの毫鍼が原型とされています。長さは一寸六分とあるので3.8㎝くらい。今日本で使われている鍼がだいたい6〜7㎝くらいなので当時のほうが短いですね。ちなみに文献によっては三寸六分(当時の長さで約11cm)と書かれたものありますが、流石に長すぎるので1寸六分が正しいのでしょう。
痛みやしびれによく使われたり、体の回復を早めたりと応用の広い針です。経絡を狙って使えと古典には書かれており、現代でももっとも応用されている鍼と言えるでしょう。
長鍼(ちょうしん)
7つ目は長鍼(ちょうしん)です。名前の通り長い鍼でその長さ七寸。つまり16.1㎝。15cmの定規よりやや長いくらいの鍼です。まっすぐ刺すことはなく、基本的には皮膚下や筋肉の下をはわせるように刺します(横刺)。八節(全身の関節)に用いるとあり、頑固な関節痛に用いられていたようです。現代でも使われる先生がいらっしゃるようで伝承されている鍼の一つです。
燔針(ばんしん)
最後9つめは燔針(ばんしん)です。長さは四寸。現代換算で約9cm。やや長さのある鍼ですが、焼いて用いるのが特徴です。しっかりと熱してもちいるので、面白いことに普通の針より痛くないです。現在では火針(かしん)として知られています。真っ赤に熱した針を冷えた部分などに用いることで、さまざまな症状に使います。
刺激量も強いので日本ではあまり普及していませんが、筆者が受けたときは数日間体がポカポカとしてそれはそれは気持ちの良い鍼だった記憶があります。すでにお亡くなりになりましたが、火針の名手として賀普仁先生が知られていました。Youtubeの動画があったのでよければ御覧ください。
参考文献
- 『霊枢講義』渋江抽斎 著 学苑出版
- 『針灸節要』高武 著 北京科学技術出版
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