前回の続きはこちら
・鍼灸師が傷寒論を読む
・太陽病(上)1条
ざっくり言うと太陽病とは
- 脈が浮く、
- 頭(後頭部)が痛んで寒さを嫌う
の二つの症状である。それでは次の条文をみてみよう。
太陽病、発熱、汗出、悪風、脈緩者、名為中風。
(2条)
前条の太陽病の症状に加えて、発熱・汗が出やすい(自汗)、風に当たるのを嫌う(悪風)、脈がゆったりとしている(緩脈)の4症状が加わると「中風」と言う特別な名前が付く。
ちなみに脳血管障害の中風ではないので一応念のため添えておく。この辺の話は『景学全書・非風篇』に詳しい。またこの太陽中風は、これだけ読むと風邪にしか使えないと思われそうであるがそうでもない。
汗は皮膚から津液(液体)がでるとすると「自汗」は湿疹や蕁麻疹などある種の皮膚病での浸出液などもかんがえられるし「発熱」も、生理学的には炎症反応の一つなのである種の炎症反応ととらえれば、さらに応用が効くだろう。
実際に「(太陽)中風」の見立てで風邪(感冒)だけでなく蕁麻疹・皮膚掻痒症・湿疹などに応用されている。
目次
病理
太陽中風は太陽病(病位が表)という前提に加えて、
「表(表層)」で起こっている病気の状態を自力で解決できない状態(虚)
とかんがえられる。このために太陽中風は「表虚証」と言われたりすることがある。
配穴(ツボ選び)
・北辰会ではこの太陽中風に一例として
「申脈・三陰交・後渓」
表証に対しては奇経をうまく使っている。先ほどの表証としての太陽中風に加えて
三陰交を加えることで、内から体を建て直して治していこうという気概が見える。
・老中医であった承淡安の配穴は
「風府・風池・頭維・外関・合谷」
こちらは経穴の補瀉を使って徹底的に表(表層)へアプローチしよう気概がみえる。いかにも中国らしい竹を割ったような配穴。
どちらも太陽中風の本質捉えているが北辰会は虚の捉え方が特徴的で面白い。
参考文献
- 『鍼灸医学における実践から理論へパート4』藤本蓮風 著
- ・『承淡安鍼灸選集』承淡安 著
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