傷寒論12・13条(桂枝湯証)

さて12条からは本格的に漢方が登場する。
皆さんは漢方薬と言えばどんな名前を思い浮かべるだろうか?
葛根湯?麻黄湯?なん方剤は有名かも知れない。
この条文で登場する桂枝湯はそんな方剤達の
基礎中の基礎と考えられて
「衆方の祖」と呼ばれてきた。

古代の処方らしい素朴だが応用の広いその方剤から
僕らは多くのことを学んで来たし、
これからも新しい発見があるだろうと思う。
それでは条文を見てみよう。


太陽中風、陽浮而陰弱、陽浮者、熱自発、陰弱者、汗自出、嗇嗇悪寒、淅淅悪風、翕翕発熱、鼻鳴乾嘔者、桂枝湯主之。(12)
太陽病、頭痛、発熱、汗出、悪風、主桂枝湯。(13)

太陽中風は傷寒論2条で見た。
「陽浮而陰弱」というのは二つの意味がある。
一つ目は
脈診の様子で、脈を触れやすく(皮膚表面へ血管が浮く)
触れると弱々しいという意味。
二つ目は
お身体の状態で、衛気が体表で活躍し(浮く)、
営気が弱る状態を意味する。
衛気と営気の解釈は難しいが
ここでは身体を温める能力を衛気
逆に身体を潤す能力を営気
言い換えてもいいだろう。

しかし身体の状態が脈にも現れると考えれば
二つの文脈は通じるものがあるだろう。

症状の鼻鳴・乾嘔も見てみよう。
「鼻鳴」は営気の不足によって鼻が乾き
呼吸のたびに鼻が鳴るように見えることを言う。

「乾嘔」は吐き気と読み替えても言いだろう。
なぜ風邪があるときに吐き気が起こるのかは
少し難しいところであるが
ウイルス性の胃炎など
身体にある有害なもの(ウイルスや毒など)を
体外に排出しようと言う防衛反応だと考えられる。


なお東洋医学的には
衛気と営気が不調のため胃の降濁作用が阻害されて
胃気上逆を引き起こし「乾嘔」になる。


桂枝湯証と言うと比較的軽い病気であることが多いけれど
「吐き気」など不快な内臓の反応が出るのは興味深い。
実際に桂枝湯には生姜(脾胃に効く生薬)が入っており
鍼灸治療でもこのあたりを意識してツボを選ぶ
と治療効果をあげやすいように思う。

参考文献
『傷寒論解故』 鈴木良知 著
『傷寒論』人民衛生出版



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