慢性胃炎と機能性ディスペプシアの違い

慢性胃炎と機能性ディスペプシア

当院でも比較的症例の多い機能性ディスペプシアですが、似た病名に胃炎(特に慢性胃炎)があります。この2つは症状こそ酷似しているのですが、似て非なるものと考えられています。では何が機能性ディスペプシアで、何が慢性胃炎なのでしょうか?

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慢性胃炎とは

慢性胃炎とは、その名の通り胃に炎症(組織学的炎症)が見られるものをいいます。つまり病院で胃カメラなどを飲んで診断されるお病気ということです。主な症状としては、みぞおちあたりの痛み・胃もたれ・早期の満腹感・吐き気・腹部膨満感・食欲不振も認めます。特に定義はないようですが、数ヶ月から数年、胃に炎症があると胃炎と診断されることが多いようです。ただ厄介なことに、慢性胃炎の患者さんの約半分(40~50%)は症状が出ないことが知られています。症状がないのに胃カメラで炎症があると言われたことがある方もいらっしゃるのではないのでしょうか?

慢性胃炎で症状がある方は、ピロリ菌を除去やアルコールの節制などで改善することがあります。

機能性ディスペプシア(FD)とは

機能性ディスペプシアは、患者さんの主観で腹部(胃のあたり)の不快な症状が現れるものをいいます。機能性消化管疾患ガイドラインの正式な定義によると「症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないにも関わらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの新株の症状を中心とする腹部症状を呈する疾患」と書かれています。要は、命に関わるような重大な疾患がないにもかかわらず、お腹のあたりがずっと不快な症状がある人と言うわけです。ただし、命に関わるような重大な疾患ではないといいますが、機能性ディスペプシアの方のQOLの低下は凄まじいものがあります。当院でもお仕事を休まざる終えないという方も少なくありません。

機能性ディスペプシアの主な症状は、慢性胃炎と非常に似ています。腹痛・食後の胃もたれ・早期膨満感・食欲不振・などが見られます。この他に吐き気や胸焼け・胃酸の逆流感などが見られることもあります。基本的には、食後の膨満感・早期満腹感・みぞおちあたりの痛み、もしくは灼熱感のうち、一つ以上が6ヶ月前からあり、3ヶ月以上続くものが機能性ディスペプシアとされています。

こちらは慢性胃炎と違って複合的な要因が絡んでいるとされており、さまざまな治療法が研究されています。

慢性胃炎と機能性ディスペプシアの違い

慢性胃炎と機能性ディスペプシア
慢性胃炎と機能性ディスペプシア

慢性胃炎は、生検や内視鏡などで炎症(組織学的病変)があるかどうかという客観的な所見で診断される一方で、機能性ディスペプシアは患者さんの主観に基づいて診断されるお病気です。ただし慢性胃炎でかつ機能性ディスペプシアという方もおられます。つまり、胃に炎症がありつつ腹部の不快感を訴える方などは、慢性胃炎でかつ機能性ディスペプシアを併発している(上記の図の網掛け部分)と考えられます。

このように慢性胃炎は医療者サイドから、機能性ディスペプシアは患者サイドから見たものと言えるかもしれません。どちらにせよ腹部の不快感が、生活の質(QOL)を下げるという意味ではしっかりと改善したいお病気です。

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