【症例集】胃痛、不眠などを伴う不定愁訴の女性

ここでご紹介する記事はあくまでも一つの症例です。
経過には個人差があります。
一方で鍼灸にはさまざまな症状に効果があると
考えられていますが現状まだまだ知られていません。
当院の症例を通して一人でも多くの方に
鍼灸の魅力を感じていただければと思います。

40代女性
主訴:胃痛、加えて不眠、ホットフラッシュなどの不定愁訴

3ヶ月前より胃痛を発症。薬物治療で効果が薄かったために追加で鍼灸施術を希望される。

舌診:胖大、舌下静脈暗
脈診:緩
腹部:小腹硬満、季肋部の張り

初診
仕事終わりなどに胃の痛みが強くなる傾向があり、起床時も胃の痛みが強くなる。舌も脈もともに脾気虚を示唆する初見であるが、腹部のみ邪実の反応が顕著に現れている。脾胃の病症においては単に虚証ということは少なく、虚実挟雑証を呈することが多い。本症例もその一つと見て、脾気虚+痰飲の病態とする。問診にて胃痛がもっともQOL(生活の質)を下げているようであったため、まずは胃痛の改善を目標とする。

2診目(7日後)
胃痛は一週間で1〜2回程度まで軽減され、寝れる日が増えてきたとのこと。不眠の原因の一つに胃実がある。痰飲がある程度解除されたものと考えられる。痰飲が解除されたためか脈診では緩脈から沈細脈へと変化する。これは虚実挟雑から虚証のみへと病態が変化したと考えられる。去痰の取穴をけずり、健脾のみの施術を加える。

6診察目(初診から2ヶ月)
胃痛はほぼ出なくなった。食欲もすこしずつ出てきている。このころよりホットフラッシュの訴えが強くなってきたので、胃痛の施術からホットフラッシュへの施術へシフトする。取穴は建脾に降気と活血を加えた施術を行う。小腹の硬満の改善を目標とする。

10診察目(初診から4ヶ月)
ホットフラッシュもかなり改善し気にならなくなってきていた。ここで一旦卒業として、何かあればまたいらっしゃるようお伝えする。

雑感

この方は経過が非常によく、3診目には胃痛を感じない日がちらほらとあった症例であったため治療間隔を比較的開けながら施術した症例であった。実際の施術では、痛みの完治まで週一回で5~6診ほどは最低でもかかることが多い。今回のような症例では虚実挟雑の場合には補瀉を同時に行うのが一般的であるが、今回は瀉法を初診でしっかり行えたことが功を奏した。初診でみだりに瀉法を使うことは避けるべきであるが、初診から鍼灸施術に深い理解を示してくださったのも幸いであった。
胃の不調の施術を狙ったが結果的に睡眠の改善につながったのは、古典にある「胃和せざれば、すなわち臥して安ぜず」を思わせる結果で先人の知恵を味えた症例でもあった。

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