【症例】30代男性 うつぶせができない慢性腰痛

30代男性
主訴:腰痛
(腰椎椎間板ヘルニアの疑い)

初診時;
若い時から腰痛に悩まされており、腰痛のために仕事を休むことも多かった。くしゃみでも腰に響き痛みが出る。この度、腰痛で手術をすることになったが、手術をする前にいろいろ試してみようとご来院される。

舌診;滑
脈診;沈弦脈
腹部;胸脇苦満だが心下部の張りは強くない

情緒の変化による症状の悪化はなく、痛みの強さはどのような状況でも同じであった。『張氏医通(諸痛門;腰痛)』には「気滞して痛むもの、脈沈弦あるいは伏結が現れる」とある。肝気鬱ではなく、気滞血瘀として足太陰経、足太陽経を主として取穴する。

施術直後は、痛みが2割ほど軽減される。

2診目(初診から8日後);
施術後4日目まで、痛みが初診時の3割まで軽減されていたが、来院時は初診時と同様の痛みがある。診察すると沈弦脈→沈細脈へと変化ている。気滞はある程度解除されたものとみて、補腎を主体とした取穴へ変更。

5診目(初診から1ヶ月後);
4診目までは一進一退の状況が続いたが、5診目のころより痛みがない日があったとのこと。脈は沈脈が解除されている。腹診では胸脇苦満は解除されたが、中脘付近に邪気が強い。補腎に建脾利湿を加えて施術する。

この頃より痛み止めを毎日服薬していたが、二日に一回程度に減らせるようになる。

8診目(初診より2ヶ月後);
痛み止めを飲むことはほんどない。後屈するとやや違和感があるが、うつぶせも問題なくできる。手術もせずにすむとのことで喜ばれる。脈は緩脈に変化している。下腹にすこし鬱滞がみられるが、主訴に影響がなさそうなので、経過観察する。

その後、痛みなく過ごされているとのご連絡をいただき無事卒業となりました。

雑感

「邪集まるところ、その気必ず虚す」の格言の通り、実証があれば裏に臓腑の虚がどこにあるかをみつけるのが今回の症例のポイントであった。根気よく通って無事卒業されたのは、一臨床家としても嬉しい症例であった。ありがたい話である。

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