【症例集】腹痛と下痢と便秘を繰り返す50代女性

ここでご紹介する記事はあくまでも一つの症例です。
経過には個人差があります。
一方で鍼灸にはさまざまな症状に効果があると
考えられていますが現状まだまだ知られていません。
当院の症例を通して一人でも多くの方に
鍼灸の魅力を感じていただければと思います。
目次

施術と経過

50代女性
主訴:腹痛。下痢と便秘を繰り返す。不眠

1ヶ月前に風邪を引いてそこから不調が始まる。風邪が回復した後、咳喘息と下痢・不眠が続き、徐々に食事が取れなくなる。

クリニックではIBS(過敏性腸症候群)の疑いを受けたが、あまり改善がなく当院にご相談いただく。

所見と経過

初診時

舌診:淡白舌、舌尖やや紅
脈診:弦脈、右のみ浮脈
腹診:季肋部に硬さあり
問診:食欲はあるが、食後に満腹感がでてしまい食べられない。液体や半固形物であれば食べられる。腹痛時はお腹を押さえていると少し楽になる感覚がある。

食欲があるので、脾気はまだしっかりしている。一方で食後の満腹感や腹痛など胃の降濁作用の失調が所見として見られる。また『金匱要略』によれば、単弦の脈(左右どちらかだけが弦脈)は痰飲を示唆する所見である。このことからも、痰飲による胃の降濁失調として施術する。手足に強い冷えがあるので痰飲は去痰だけでなく、温補補腎として腎の経穴も少し加える。

二診目(初診より2日後)

通常は週一回から様子を見るが、初診時にまともな食事が取れないとで早めにご来院していただいた。前回後、2週間ぶりの快便があり、施術した日はよく寝れて足の冷えもマシになっていた。腹痛はまだあるが、久々に空腹感があった。脈は単弦→滑脈へと変化。中脘に張りが出てくる。胃気がどれぐらいしっかりとしているかがはっきりとせず妄りに瀉法をかけにくい。去痰から行気へと切り替えて様子を見る。

三診目(初診より1週間後)

4日間は経過よく過ごされたが5日目より腹痛と下痢が再発。ただ腹痛は前回に比べると比較的軽いように感じる。この一週間は悩んでいた不眠は改善している。脈は変化なし。ある程度、胃気はしっかりしているだろうと見て、再び去痰に切り替える。温補補腎も同時に行う。

四診目(初診より2週間後)

施術後、下痢と腹痛はなく経過よく過ごされる。このころ経過はいいが家族と医師から内視鏡の検査を勧められていた。内視鏡の検査は来月に決めるとのことなので、それまでにある程度改善しましょうという形で目標設定させていただく。このころから固形物はすこしずつ食べられるようになってきた。

5〜10診目(初診より2ヶ月半)

お食事は普通に取れるようになってきたが、日によってまだガスが溜まったように感じる日が月に1〜2回程度あるとのこと。お通じもほぼ快便である。不眠は以前ほどではないが、たまに睡眠導入剤をつかうので、飲まずに過ごしたいとの申し出があり、現在はこちらの施術中。

振り返り

中医学では脾と胃は混同されがちであるが、「食欲の脾、食事量の胃」という差があると改めて感じた。施術上は正気の充実度がどのあたりにあるかを見立てるのに苦労したが、これは今後の課題である。

今回は風邪であったが、何かのきっかけから胃腸のトラブルや不定愁訴につながる方を診させていただく機会が増えてきたようにおもう。病院へ通院とともに早めに鍼灸院という選択肢を選んでくださったのも、早期の改善につながった要因であると思う。特に診断のつきにくい症状には鍼灸は良い選択肢になってくれると考えている。ぜひ似た症状でお困りの方は鍼灸を選択肢に入れてほしい。

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