アトピー性皮膚炎を鍼灸で改善する
一般的なアトピー性皮膚炎の治療法には、薬物治療・スキンケア・悪化因子の特定と対策の三つがあります。ただしアトピー性皮膚炎は原因が多様な疾患であるため薬物治療においても対症療法で終わることがほとんどです。鍼灸や漢方など、東洋医学の考え方を用いることで、アトピーのコントロールを容易にすることができ、さらなる症状の改善をはかることが可能です。
アトピー性皮膚炎は、アトピー素因(体質)と皮膚のバリアの低下による複合的なお病気です。その原因は多岐にわたるので、必ずしもその原因は皮膚だけでなく、全身性の内臓を含めた疾患といっても過言ではありません。
症状は痒みのある湿疹が特徴的です。痒みのあまり掻き毟らずにはおれないことが多く、ジュクジュクとしたタイプや、かきすぎて皮膚がかさぶたのようになったタイプ、または乾燥して皮膚が剥がれてくるような方も中にはいらっしゃいます。半年〜1年以上も続くことも特徴であり、増悪と寛解を繰り返します。一度治ったと思ったとしても、ふとしたことからまたぶり返すことが度々あるのもアトピーの厄介な部分と言えるかもしれません。また特にアトピー性皮膚炎の痒みの誘発・悪化因 として温熱刺激,発汗,ウール繊維,精神的ストレス,食物,飲酒,風邪などが特に重要とされています。
アトピー素因に対する誤解と偏見
アトピー性皮膚炎を患う方多くの方は「アトピー素因」を持つと言われます。
アトピー素因とは
- 家族もしくは本人が、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・ 結膜炎・アトピー性皮膚炎のどれかを患ったことがある。もしくは患っている。
- IgE抗体を産生しやすい素因がある。
このうち二つのどちらかがあるとアトピー素因があると言われます。
IgE=アレルギーではないというのは大切なポイントです。
つまりアトピーとは多様な原因が絡み合う疾患であり一般的なアレルギー疾患ではないということです。
アトピー性皮膚炎の西洋医学的治療法
非常に悔しいことですが、アトピー性皮膚炎の根本的な治療法は現在でも見つかっておりません。
そのため、ステロイド外用薬を用いた対症療法が中心となってきます。
ステロイドはもともと人体の副腎で作られているホルモンでしたが、1952年に人工的に作ることができ、70年近く使われているお薬になります。ステロイドの抗炎症作用は非常に強力で、ステロイドを使うことで一時的に皮膚の症状が改善されます。湿疹→掻爬→炎症→湿疹→掻爬というアトピー性皮膚炎の負のループから逃れるためにも、一時的な症状の改善を図っているのです。ただし、ステロイドには色素沈着(皮膚が黒くなる)や緑内障、骨粗鬆症などの副作用があり、大量に使い続けることが出来ないのも現状です。このため一般的な治療法では、アトピー性皮膚炎は「治すものではなく、上手に付き合っていくもの」という言い方がされています。
アトピー性皮膚炎の東洋医学的施術
鍼灸施術では身体の自然治癒力を高めることでアトピー性皮膚炎の改善につながかります。
ただし、ステロイドを長期に使用されている方はこの自然治癒力またはホメオスタシス(身体が持つ恒常性)を取り戻すのに、時間のかかる方が多く効果が出るまでに5〜6週間ほど必要になる場合があります。施術の頻度は週1〜2回程度です。
ここから先は鍼灸でのアトピー性皮膚炎の施術法を解説します。少し専門的になりますので興味のある方のみ読んでください。
鍼灸におけるアトピー性皮膚炎の施術法
鍼灸(伝統医学)では、アトピー性皮膚炎を三つの構造から見ることで、効果を出すことができると考えています。その三つとは皮膚、皮下、そして内臓です。
第一層は最も表面的で目で確認できる部分です。
皮膚(皮)ではおもに炎症の程度をみます。炎症の程度が強ければ、痒みも強く現れるので、炎症をある程度まで落ち着かせることがとても大切です。炎症が強い増悪期は特に体質改善などよりも炎症を抑えることでその後の経過が大きく変わってきます。この方法はステロイドの対症療法に近く、専門的には「標治」と言われます。
第二層、皮下では痒みの原因を特定します。
次は皮下(肌肉)の状態です。皮下には痒みの原因があると考えており、ある程度痒みが落ち着いた段階で、この痒みの原因を取り除く施術を行います。専門的には「活血」と言われる方法をとります。痒みや皮膚の慢性炎症では、皮膚へと続く血流が過剰もしくは不足することが多いため、この改善を行います。例えるならば道路に路駐がたくさんいるような状態で、物質(栄養)を配達できないという状況の交通整理を行うようなイメージです。
第三層、最も深い内臓の層では皮膚のダメージ修復の程度を観察・改善していきます。
ここまで皮膚の炎症を抑え(第一層)、そこにいたる道の循環の改善(第二層)を行いました。しかしながらそもそも物質(栄養)がなければ、ダメージを受けた皮膚は改善しません。そこで鍼やお灸を使い、内臓の反応点(デルマトーム含む)にアプローチすることで、自然治癒力をさらに高めていきます。
以上三つの構造からアトピー性皮膚炎を改善していきます。症状が重い、経過が長いほどこの三つの状態が複雑に絡み合って存在することが多く、「難治性」「治らないアトピー」と言われることが多くなります。しかしアトピー性皮膚炎に限らず、お病気には必ず理由がありそれを改善することで症状は快方へと向かうと当院では考えております
アトピー性皮膚炎でお困りの方へ
鍼灸でアトピー性皮膚炎できることはあまり知られておりません。
メリットとしては、一旦症状が回復したと思ってもまた再発するリバウンドのリスクが少なく鍼灸施術を通してお身体を知る機会が増えるので、ご自身の体調管理ができるようになったという声もいただいております。またステロイドの離脱を目指すことができるのも魅力です。
デメリットとしては、効果をしっかりと出すまでに時間がかかる(通常2〜3週間程度 難しいものに関しては5〜6週間程度)ことです。しかしながら長期的にお身体を改善していくという点では、ステロイドの離脱も目指せる方法になります。
当院では軽い症状の方から、日常を送れない程度の痒みをもつ方までさまざまな方にご来院され、効果を実感していただいております。当院といたしましても一人でも多くのアトピー性皮膚炎の方の症状を鍼灸(針灸)施術を通して改善できるよう切磋琢磨しております。
アトピー性皮膚炎をお持ちの方でまだ鍼灸施術を受けたことのない方は、ぜひ一度鍼灸施術を受けてみてはいかがでしょうか?
ご来院お待ちしております。